ひらせのはなし

【地中海最大の島】

もう何年も前のお正月、シチリア島内を転々と旅をした。

カターニアの市場ではカジキマグロが長い嘴をつけたまま売られていて、その横に雲丹や蛸やしゃこが綺麗に並んでいる。ノートという小さな町のお菓子屋さんではジェラートがあまりに美味しくて、凍えながら真冬の散歩道を引き返しておかわりをした。強い陽射しと静けさに支配された昼間のトラーパニは開園前のテーマパークのようで、そこでは日没とともに人々が姿を見せはじめ、そしてあっという間に通りが溢れかえる。

一番印象的だったのは最終日に訪れたパレルモのレストラン。前菜からデザートまで、すべての皿に特産のオレンジが使われていた。「旬の食材に勝るものは無し」を柔らかく含んだ男前の微笑みと共に、カメリエーレが次々に料理を置いていく。またまたオレンジ、まだまだオレンジ。なんて潔ぎよくて、なんて至極真っ当な食文化なんだろうと、果たして短い半生を振り返る夜となった。

ギリシャやアフリカ、スペインやイギリスの影響も受けてきたところで、イスラムとカトリック、いろんな価値観が混ざり合って形造られた島。雨上がりのパレルモの朝、通りの突き当たりに緑の地中海が見えた。

本年もイタリアを感じるワイン、
お届けいたします。

どうぞよろしくお願いいたします。

2023年1月7日 ひらせ