ヒラセのはなし

思い新たに

私は今、ワインに携わることを仕事としています。そのひとつ前は、会社員でした。ひとつ前の終盤あたりから今まで、実にたくさんのいろいろなことが起こったのですが、その中でも重要な出来事のひとつに、ある先生との出会いがありました。

その先生は日本におけるイタリアワインの第一人者で、現役のソムリエであり、誰よりもイタリアワインを愛し、常に学び、ワイン初心者からワイン業界人まで分け隔てなく、分かりやすく面白く誰よりも深く、イタリアワインの魅力を語る方でした。

正確にお伝えするのが難しいのですが、その語り口は知識を身に着けることを強要する感じではなくて、ひとつのワインに、いろいろな角度から光を当てて立体的に浮かび上がらせて、こうやって楽しむのもいいでしょう、と繰り広げられるショーなのです。「イタリアワイン」をイタリア文化のひとつとして、奥深く魅力的に語るショーなのです。お話になる内容も勉強になるのですが、何よりもその背後にある膨大な知識と好奇心の塊に衝撃を受けました。ワインを堪能するのは五感ですが、そこに知識と好奇心を加えることでこんなにも深く堪能・探求できて、しかも一生かかっても全く足りない世界だなんて、なんて素晴らしいのだろうと思ったのでした。

不世出(ふせいしゅつ)のイタリアワイン探求家であった先生は、ちょうど1年前、ご病気でお亡くなりになりました。「あのような方は2度と現れないね」と、ともすけとたびたび話しています。今、先生の授業やセミナーを受けたときに取ったノートを見返すと、その偉大さに改めて身が引き締まる思いです。そのノートの続きはこれからは自分で少しずつ書き足して、少しでもさらに深くイタリアワインを探求して、みなさまにその素晴らしさをお伝えしていきたいと思っています。